THE HANGOUTに生かされていた話

3月に一番見られたツイートはこれだった。

 

吉田豪の『聞き出す力』を読んだ。インタビューの極意ではなく、面白エピソード。楽しかった。森元首相に対する好感度が一時的に上がった。

 

たくさん見られて、私は普段Twitterをしてないんじゃと思った。作者は慕われている人だと思う。

私が慕っているのは宇野常博さんだ。批評家とはこういう人のことを言う。最初の非常事態宣言のとき私は働いていなくて、宇野さんのラジオTHE HANGOUTに生かされていた。J-WAVEが収録をYouTubeにも上げてくれており、YouTubeの勧めで出会い、ずっと聞いていた。実際にラジオで放送されていたのは2014年から2016年。YouTubeではラジオで音楽を流している間の会話も聞くことができ、収録の様子がよく分かる。母に電話するとなんでも空気階段で返されるが、そのときの私はなんでも宇野さんはと言っていた。大学生向けラジオで、大学生のようにメモを取り、例えば宇野さんが「その映画の話したら3時間かかる。2時間の映画なんだけどね」って言っていたことなどを報告していた。2020年の一番の収穫として私は、宇野さんを知ったことを挙げている。

 

大学院に進学したとき研究室の先生が、芹沢光治良の『人間の運命』を貸してくれた。先生は家にこもっていたときにこれを読んで、実験しかないと思い研究室に戻ったそうだ。博士課程の卒業生は自分が辛かったときにどう乗り越えたかという話をするので、博士課程になると全員そうなるのと思っていた私は、そうなったらこれを読もうと、『人間の運命』の全巻をお守りのように持っていた。結局卒業するまで、1巻で終わる芹沢光治良の2作品は読んだものの、『人間の運命』は1巻の最初しか読まなかった。天皇陛下が小学校に来るところは覚えている。けれどもお守りとしての役割は果たしてくれた。

もし博士課程に進学する人がいたら、そうでなくてもこの先悩みそうだなと思ったら、ぜひYouTubeにはTHE HANGOUTがあるからと言いたい。「25歳までに働いている人は信用しない」とか宇野さん言ってくれるから。「仕事と家庭しかないのかよ」とか言ってくれるから。少し離れていると、そうでした、そう思っていいんでしたと忘れてしまうけど、今は遅いインターネットラジオもある。聞かなくてもいいけど、私にとっての『人間の運命』になると嬉しい。もし聞いてくれたら世界の真実、記憶の扉、スノーホワイトの話をしよう。

ちなみに私はその先生に、あなた向きのところがあったから一緒に行こうと言われてそのままそこで働き出した。以来私は、私に合っているものは人が見つけてくれると思っている。思い付いたらぜひ私に話をください。